スティーヴンソンの欧州カヌー紀行

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スティーヴンソンの欧州カヌー紀行

スティーヴンソンの欧州カヌー紀行 (12)

ストーブの隙間や空気穴から見える赤い炎を別にすれば、部屋は真っ暗だった。女将が新しい客のためにランプをつけた。暗かったおかげで断られずにすんだのだと思う。というのも、彼女がぼくらの身なりをみて喜んだ風にはみえなかったからだ。ぼくらが入った部...
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スティーヴンソンの欧州カヌー紀行 (11)

ポン=シュル=サンブル行商人シガレット号が朗報を持って戻ってきた。ぼくらのいるところから歩いて十分ほどのポンと呼ばれるところに宿があるらしかった。穀物倉庫にカヌーを置かせてもらって、子供たちに道案内を頼んだ。子供たちはぱっとぼくらから離れ、...
スティーヴンソンの欧州カヌー紀行

スティーヴンソンの欧州カヌー紀行 (10)

サンブル運河は小さな丘の間を縫って蛇行しながら流れていたので、クアルトの水門の近くまでたどりついた時には午後六時を過ぎていた。船を曳いて歩く道には何人か子供たちがいて、道沿いにぼくらを追いかけてきた。シガレット号の相棒は彼らと冗談を言いあっ...
スティーヴンソンの欧州カヌー紀行

スティーヴンソンの欧州カヌー紀行 (9)

サンブル運河──クアルトまで午後三時ごろ、グラン・セールの従業員全員が水際までぼくらの見送りにきてくれた。その中には乗合馬車の男もいたが、しょぼくれた目をしていた。かわいそうなカゴの鳥君! ぼく自身もかつては駅をさまよいながら次から次へとや...
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スティーヴンソンの欧州カヌー紀行 (8)

相棒一人をのぞいて他には知り合いが誰もいないという場所でも、それなりに幸福に生きられるというのがわかった。が、これは奇妙なことではある。自分とかかわりのない人々の生活を眺めているうちに、個人的な欲望がマヒしてくるのだろうか。単なる傍観者であ...
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スティーヴンソンの欧州カヌー紀行 (7)

モーブージュにてロイヤル・ノーティークのよき友人たちや、ブリュッセルとシャルルロア間に五十五は下らない水門があることに恐れをなしたぼくらは、国境はカヌーや荷物もまとめて一緒に列車で超えることにした。一日の航程に五十五も水門があるというのは、...
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スティーヴンソンの欧州カヌー紀行 (6)

ボートでおバカなことをするより商売の方が面白いと誰が言えるだろうか? そういうことを言う人はボートを見たことがないか商売というものを知らないに違いない。少なくともボートの方が健康にはずっとよいのは確かだ。人間がやるべきは、まず楽しむことだ。...
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スティーヴンソンの欧州カヌー紀行 (5)

ロイヤル・スポーツ・ノーティークラーケンの近くで雨がやんだ。だが、すでに日が沈み寒かった。ぼくら二人はずぶ濡れで、しかも厄介な問題に直面していた。アレ・ヴェルトのはずれに近く、いよいよブリュッセルに入ろうかというところまで来ていたのだが、運...
スティーヴンソンの欧州カヌー紀行

スティーヴンソンの欧州カヌー紀行 (4)

ウィレブルークとヴィルボールデの途中で、地主の館へと続く道のように美しい運河のところで、ぼくらは昼食にしようと上陸した。アレトゥサ号には卵二個とパン、ワイン一本があり、シガレット号には卵二個とエトナ製のコンロを積んでいた。シガレット号の相棒...
スティーヴンソンの欧州カヌー紀行

スティーヴンソンの欧州カヌー紀行 (3)

ウィレブルーク運河翌朝、ぼくらはウィレブルーク運河に入ったが、雨が激しく降って寒かった。こんなに冷たい雨が降りそそいでいるのに、運河の水は紅茶を飲むのにちょうどよいくらいの温かさだったので、水面から蒸気が立ち上っていた。あいにくこんな状態だ...
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