経度については、海外旅行をするときの日本と現地時間の差(時差)と考え方は同じで、経度が15度で1時間の差になる(360÷24=15)。緯度よりずっとわかりやすい。
とはいえ、赤道付近で経度が1度違うと距離は60海里(1852m×60=111120m)、15度では900海里(1667km)にもなるので、もう少し下の単位が必要になるが、前回述べたように時間と同じで、分や秒を用いる。
1時間=60分 1分=60秒
1度 =60分 1分=60秒
どちらも分と秒でまぎらわしいので、
時間の場合は、時間(h)、分(m)、秒(s)を使う(hour、minute、second)。
2時間5分30秒 => 2h、5m、30s
緯度・経度の場合、度(o)、分( ′)、秒(″)を使う。
135度15分25秒 => 135o15’25″
経度1度の距離は、赤道付近が最大で、北または南に行くほどその距離は狭くなり、北極や南極では1点に収束する(理論上はほんのひとまたぎで、経度0度から経線をすべて横切って地球一周できる)。
緯度の1度はどこであっても距離は変わらない。
経度を知るには、その場所で太陽が真南にきたときの時間を計測し、
それが経度0度のグリニッジ標準時(GMT)より何時間何分進んでいるか(遅れているか)を調べ、
その時間差を度に換算すれば、いまいる場所の経度が算出できる。
現在では、GMTではなく、セシウム原子時計で調整した協定世界時(UTC)が使われる。両者では100年間で18秒ずれるとされるが、六分儀を使った観察では「同じ」とみなしてよい。
実際の観察では、太陽がいつ真南にきたのかを判断するのかが意外にむずかしい。また太陽はきちんと1日24時間で1回転しているわけでもないので、その分の補正も必要になる(「均時差(きんじさ)」という)のだが、その点については、実践編で具体的な手順を説明する。
ここでは、時間と度の換算について、きちんと理解しておこう。
時間と度の関係は、地球が24時間で1回転することを前提としている。
つまり 24h=360o だから
船にはグリニッジ標準時を示す時計(いわゆるクロノメーター。いまどきの時計は昔の貴重で高価なクロノメーターと同等以上の精度がある)が必須になるが、グリニッジ標準時の正午との時間差を求めて、度に換算する。
グリニッジ標準時より早ければ東経、遅ければ西経になる。
具体的な例で考えよう。
太陽が真南にきた時間(南中時刻)をはかったら、グリニッジ標準時の正午(12時)より10時間18分41秒早かったとする。
10h×15=150o
18m×15=270’=4o30’
41s×15=615”=10’15” なので、
経度(E) =(150+4)o(30+10)’15”
=154o40’15”
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ここからは、おまけ
電卓かパソコンの表計算ソフトが使えれば、こんな筆算はしなくてすむ。
まず、10h18m41sを時間で表す。
10+18/60+41/60=10.31138889(時間)
これに15をかければ、整数部が度になる。
10.31138889x15=154.6708333
小数点以下に60をかければ、整数部が分になり、その小数点以下に60をかければ秒がでる。Excelのような表計算ソフトだとTEXTなどの関数を使えば、数値を入力するだけで
A°B′ C″の形式で表示させることもできるが、そういう今風の道具を使ってよいのなら、「最初からGPSを使えよ」って話になるわけで、天測にロマンを感じたいのであれば、計算も電卓なんか使わず、鉛筆片手に筆算できる範囲にとどめておいたほうがよい。
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