ヨーロッパをカヌーで旅する 82:マクレガーの伝説の航海記

ジョン・マクレガー著

現代のカヤックの原型となった(帆走も可能な)ロブ・ロイ・カヌーの提唱者で、自身も実際にヨーロッパや中東の河川を航海し伝説の人となったジョン・マクレガーの航海記の本邦初訳(連載の第82回)
eyecatch_2019
水もれするカヌーに乗っているのは、なんとも情けなくみじめだ──足を引きづった馬に乗ったり、銃身の曲がった銃を使うようなものだ。カヌーでは多くの機能が必要とされるが、最優先すべきは信頼性である。それで、最初の村まで来たところでカヌーを止めた。そこで修理してくれる人を見つけてパテなどを調合してもらい、それを継ぎ目に押し当てた。岸辺の宿で食事をする間に硬化してくれるはずだ。その場所では、長大なイカダが組み立てられていた。パリまで下るのだそうだ。宿ではエネルギーに満ちあふれた農夫たちが一瓶二ペンスのワインを飲んでいた。

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ヨーロッパをカヌーで旅する 53:マクレガーの伝説の航海記

ジョン・マクレガー著

現代のカヤックの原型となった(帆走も可能な)ロブ・ロイ・カヌーの提唱者で、自身も実際にヨーロッパや中東の河川を航海し伝説の人となったジョン・マクレガーの航海記の本邦初訳(連載の第53回)
eyecatch_2019
とはいえ、ここで合流したアーレ川は、カヌーにとってそれほど危険というわけではなかった。川が大きくなってくるにつれて激流も穏やかになるし、あちらこちらで暴れまわった後、少し落ち着いて安定し、堂々とした河になりつつあった。だが、このあたりでは、カヌーでの川下りの旅につきものの流木が多く、あちこちに引っかかっている。川底につかえた状態で先端が浮いたり沈んだりしていて、川の水もひどく濁っているため、流れてきた倒木の危険性は高い。油断せずしっかり見張っていなければならない。

前にも説明したが、身振りに加えて英語を大声で叫ぶというマクレガー流の「川の言語」は、このように川幅が広いところでは厳しい試練を受けことになる。たとえば、百ヤード(約九十メートル)ほども離れた川岸にいる人と、次のようなやり取りをするのに、ジェスチャーと彼らにとっては外国語の英語だけでどうやってうまく意思を伝達できるだろうか?

「あの岩のところまで行って中洲の左側を通った方がいいですか、それともこの辺で上陸し、カヌーを引きずって迂回(うかい)してから、また水路に戻った方がよいですか?」といったようなことだ。

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