米窪太刀雄(よねくぼ たちお)著
夏目漱石も激賞した商船学校の練習帆船・大成丸の世界周航記。
若々しさにあふれた商船学校生による異色の帆船航海記が現代の言葉で復活(連載の第61回)
南太平洋の元旦
青海原に暮れ行く今年かな
明治四十五年と大正元年との両面を有する、記念多き、変化多かりし一年は、静かに広大な青い海の水平線のかなたに暮れていって、悲しい、嬉しい、華やかにして暗い、さまざまな色のぼくの記憶もまた、一緒に伴って去ろうとしている。いまさらに強い哀惜(あいせき)の念が胸に湧く年の暮れである。