現代語訳『海のロマンス』119:練習帆船・大成丸の世界周航記

米窪太刀雄(よねくぼ たちお)著

夏目漱石も激賞した商船学校の練習帆船・大成丸の世界周航記。
若々しさにあふれた商船学校生による異色の帆船航海記が現代の言葉で復活(連載の第119回)

リオ市の美観

昔、十返舎一九(じゅっぺんしゃいっく)という滑稽(こっけい)の珍を傾け、洒脱(しゃだつ)の妙を極めた戯文(げぶん)の天才がいたが、その人一生の傑作『東海道膝栗毛』において、主人公たる弥次郎兵衛(やじろべえ)と喜多八(きたはち)のおどけた道行きを述べるくだりで、

暁(あかつき)の風、樹木を鳴らし、波の音、枕に響き、つき出す鐘に驚き目覚めてみれば、はや往来のさま賑やかに明け方のカラスがカアカア、馬のいななきヒインヒイン、鈴の音シャンシャン、

と写実の真髄をうがち、はては 続きを読む