米窪太刀雄(よねくぼ たちお)著
夏目漱石も激賞した商船学校の練習帆船・大成丸の世界周航記。
若々しさにあふれた商船学校生による異色の帆船航海記が現代の言葉で復活(連載の第149回)
五、激烈なる排日熱
ぼくの記憶がしっかりしていて確かならば、かつて在シドニー日本総領事の齋藤氏は、休暇で帰国する途中、オーストラリアにおける排日思想の傾向について、すこぶる楽観的な説を述べられていたようである。しかし、それは政府の立場から概括的に、つまり、全オーストラリアとして見た場合の抽象的な所感のようである。
「王侯は山河を見、田舎者は畑の生育具合を見る」である。
二十日あまりのフリーマントル停泊中に、親しく在西オーストラリアの労働者から聞いた当地の日本人に対する感情は、さすがにいろいろ考えさせられるものであり、得るところも多かった。 続きを読む