米窪太刀雄(よねくぼ たちお)著
夏目漱石も激賞した商船学校の練習帆船・大成丸の世界周航記。
若々しさにあふれた商船学校生による異色の帆船航海記が現代の言葉で復活(連載の第44回)
「湖畔」行き
十月八日朝九時、サンディエゴの第七街(セブンス・ストリート)から「湖畔(レイクサイド)」に向け出発した特別列車には、百三十の詰襟(つめえり)に三つボタンの練習生と、百人近い背広の紳士とが睦(むつ)まじく乗りこんだ。
サンディエゴ市およびその付近の日本人会の主催のもとに、練習生の招待会がレークサイドであるからである。