現代語訳『海のロマンス』97:練習帆船・大成丸の世界周航記

米窪太刀雄(よねくぼ たちお)著

夏目漱石も激賞した商船学校の練習帆船・大成丸の世界周航記。
若々しさにあふれた商船学校生による異色の帆船航海記が現代の言葉で復活(連載の第97回)

ナポレオンの墓

稲妻のようにジグザグに覇王樹(サボテン)の谷を迂回(うかい)し、屈曲した角石(かどいし)だらけの路は、今日を晴れの日だと清浄(きよ)げに身なりを整えた色黒き案内の好々爺(こうこうや)の指さす杖の先にかすんでいる。混然として白い路と青い峰との溶けあうあたりには、ふわふわと巻雲の浮いているのが見える。 続きを読む