ジョン・マクレガー著
現代のカヤックの原型となった(帆走も可能な)ロブ・ロイ・カヌーの提唱者で、自身も実際にヨーロッパや中東の河川を航海し伝説の人となったジョン・マクレガーの航海記の本邦初訳(連載の第44回)
ここでは、三人のイギリス人が蒸気船を待っていた。スイスまで釣りをしに来たのだ。釣りや狩猟と旅行は、ぼくの経験からすれば、どっちを優先するかを決めておかなければ、あぶはち取らずになってしまう。かつてノルウェーのヴォッセヴァンゲンの町で、何時間も馬車を待っていたときのことを思い出す。待ち時間の間、ぼくは手頃な杖に釣り針に見立てたピンをつけて三匹のマスを釣った。これはこれで面白かった。一方、ぼくの連れは暇を持てあまし、石の上に置いたぼくのグレンガリー帽*1を拳銃で撃ったりしていた。
*1: グレンガリー帽 - スコットランドの、縁なしの、フェルトやウール製の軍帽。