現代語訳『海のロマンス』137:練習帆船・大成丸の世界周航記

米窪太刀雄(よねくぼ たちお)著

夏目漱石も激賞した商船学校の練習帆船・大成丸の世界周航記。
若々しさにあふれた商船学校生による異色の帆船航海記が現代の言葉で復活
(連載の第137回)

ブラジルの移民事情が詳細に語られていますが、内容は、これまであまり報じられていない初耳のことも多いですね。
ブラジル滞在編は12月までです。
来年(1月1日)から、
リオを出て地球の反対側からオーストラリア経由で帰国する航海が再開されます。

五、移民優待法

移民は──自由移民か契約移民かに関係なく──すべて、いったんリオ市、あるいはサントス港の移民収容所に引きとられ、各耕地あるいは各州での需要や注文に応じて、沿岸航路船または鉄道の便によって移送される。

これらの汽車賃または汽船賃はむろん無料で、移民収容所内にある初めの一週間は、居住や衣食に必要なものはみな州庁から支給される。耕地に到着した後は、政府支給の仮小屋に居住し、農具は一切貸与され、すべての種子(たね)は支給され、数年間は無料にて医師の診断を受けることができ、薬代も一年間は無料など、各種の恩典がある。 続きを読む