位置の線航法(2)
前項で説明したように、
天体(ここでは太陽)が真上に見える場所の緯度経度と船がある位置の緯度経度(推定値)がわかれば、船が円周上に存在する円が描ける。
計算した天体の高度と実際に測定した高度の差で、円をもっと大きくすべきか小さくすべきかがわかる。
天体位置決定用図に作図して位置を出す。
という手順で作業が進められる。
では、具体的にみていこう。
1. 天体の高度を測定し、時間を記録する。
観測高度に必要な改正を行って真高度 at を求める。
(改正については、子午線高度緯度法の項を参照)
2. 現在の船の推定位置を出す。
前回の船の位置から進行方向と経過した時間を考慮して現在の船の位置A(緯度と経度)を推定する。推定位置は多少ずれていても問題ない。
3. 天体が真上にある場所Xの緯度(赤緯d)と経度(赤経R.A.)を求める。
赤緯は天測暦から、赤経はグリニッジ標準時(GMT、または世界時UT)との差から時角(h)として求める。
(子午線高度緯度法の項と経度の項を参照)。
4. 推定位置(2項)と天体の位置(3項)の緯度経度から、AXの方位(計算方位角Z)と計算高度Acを求める。
ac:計算高度、ℓ: 推定緯度、d: 赤緯、h:時角とすると
(1) 高度acの計算式
sin ac = sinℓ・sin d + cos ℓ・cos d・cos h
(2) 方位角Zの計算式
cos Z = (sin d – sin ℓ・sin ac) / (cos ℓ・cos ac)
こういう数式が出てくると面倒に見えるが、天測専用の電卓や関数電卓があればすぐに結果はでる。エクセルなどのスプレッドシートに計算式を入れておいて数値を入力すれば自動的に計算されるようにしておいてもよい。
とはいえ、天測計算表にはすでにそうした計算を行った結果が記載されているので、それを使えば、単純な手計算でも出せる。
いわゆる米村表で「高度方位角計算表」として計算されている。こんな感じ……使い方も欄外に記載されている。
出典:書誌第601号『天測計算表』 海上保安庁
天測計算表を使った計算高度と方位の求め方
(1) 計算高度
地方時角 h に対してA1、赤緯 d に対してA2、推定緯度 ℓ に対してA3の値を計算表から探し出し、A4を求める。
A1+A2+A3=A4
A4 の値から計算表の A4 で該当する欄から A5 を求める。
ℓ と d が同符号のときは ℓ - d 、異符号のときは ℓ + d をA6とする。下の計算式でA7を求める。
A5 + A6 = A7
計算表で A7 に該当する値が計算高度 ac になる。
(2) 計算方位角
A1 を求めるとき、その列の右に Z1 の値が記載されている。
A2 の値はそのまま Z2 の値になる。
A7 の値を求めるとき、右横に Z3 の値が記載されている。
Z1 + Z2 - Z3 = Z4
表でZ4に該当する値が方位角Zになる。
5. 作図
(1) 天体位置決定用図で、コンパスローズの中心を船の推定位置として、計算方位角の線を引く。
図の線②
(2) 計算高度 at と真高度 ao の差(修正差 I )を求め(単純な引き算)、修正差 I 分だけ、船の推定位置を方位角の線に沿って外側(真高度が計算高度より小さい場合)または内側(真高度が大きい場合)に移動させ、方位角に垂直な線を引く。
これが位置の線になる(細い赤線①)。船はこの位置の線上のどこかにいる。
修正差Iの距離は、緯度によっても異なるので、位置決定用図の右側に印刷されている漸長緯度差の尺度からディバイダで測る(オレンジ)。
6. 数時間後に同じ手順で観測を行って、さらに位置の線を引く。
この二本の線の交点が船の位置(船位)になる。
注意: 最初の位置の線を時間の経過分だけずらす必要がある(転位)。これは速度と進行方向で距離をだして、その分だけ平行移動させるか、最初の推定位置をその分だけずらして作図し直してもよい。
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