ヨーロッパをカヌーで旅する 60:マクレガーの伝説の航海記

ジョン・マクレガー著

現代のカヤックの原型となった(帆走も可能な)ロブ・ロイ・カヌーの提唱者で、自身も実際にヨーロッパや中東の河川を航海し伝説の人となったジョン・マクレガーの航海記の本邦初訳(連載の第60回)
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ラインフェルデンの町が見えてきた。ファウフェンブルグからぼくが跡を追う形になっている例のイギリスの五人組のボートは、ぼくがたったいま通過したこの激流の瀬をどうやって下ったのだろうかと気になった。後になってわかったが、この漕ぎ手四人の五人乗りのボートが瀬にさしかかったときは増水していて、岩が露出していなかったらしい。上流側の水深のあるところで川の水が渦を巻いているのはぼくも見たが、そういった渦に遭遇しただけらしかった。それで、連中はバーゼルまで一気に漕ぎ下ったのだという。バーゼルのホテルで関係者から聞いたところによると、五人のイギリス人たちは服も荷物もびしょぬれの状態で到着したそうだ。ウェイターはにやにやしながら、洗濯係をしている女友達が一晩で二十七フランも稼いだらしいと教えてくれた。

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ヨーロッパをカヌーで旅する 59:マクレガーの伝説の航海記

ジョン・マクレガー著

現代のカヤックの原型となった(帆走も可能な)ロブ・ロイ・カヌーの提唱者で、自身も実際にヨーロッパや中東の河川を航海し伝説の人となったジョン・マクレガーの航海記の本邦初訳(連載の第59回)

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カヌーの運搬では自分たちを雇えと言外に示唆しているのかを確かめるため、ぼくは二人に、万一に備えてそっちの船でついてきてもらえませんかと聞いてみた。彼らは相談していたが、この提案には乗ってこなかった。それで、問題の激流の瀬を通過するためのベストなコース選択について聞いてみた。彼らは砂の上によくわからない絵を描き、かなりこみ入った指示を授けてくれた。が、それを実行するのは無理だった。で、ぼくは静かに頭を下げ、砂に描かれた絵を足でもみ消し、何も聞かなかったことにして行き当たりばったりでいくことにした。まあ「知らぬが仏」というが、実際に行ってみないとわからないとも思ったのだ。進むべき道は自分で見つけるという高揚した意気ごみと、それを自分で見つけたときの満足感は、そのためにした苦労には十分報いてくれる。それだけの価値がある。山岳地帯を旅しているときもそうだった。単に足の筋肉を動かして景色を見るためだけに行くのであれば、ガイドを三人ほども雇い、互いに身体をロープで結びあってガイドの後を黙ってついていけば成功するだろう。だが、頭を使い、気を配り、判断するのはガイドの役割で、案内される側はただその尻を見ながらついていくだけだ。

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ヨーロッパをカヌーで旅する 57

ジョン・マクレガー著

現代のカヤックの原型となった(帆走も可能な)ロブ・ロイ・カヌーの提唱者で、自身も実際にヨーロッパや中東の河川を航海し伝説の人となったジョン・マクレガーの航海記の本邦初訳(連載の第57回)
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第十章

カヌーをまた荷車に載せ、再び通りを抜けて滝の下の地点まで運んだ。数時間休憩した後、ロ・ブロイ・カヌーを水面に浮かべると、カヌーはまた生き返ったようになった。周囲のすべてがすばらしかった。川には十分な深さがあり、空はどこまでも高く、ぼくは幸福感に満たされた。まもなく、遠くで波が砕け散る鈍い音がまた聞こえ始めた。近づくにつれて、その音が大きくなってくる。無視するわけにはいかない。ラインフェルデンの急流までやってきたのだ。

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