『現代語訳 海のロマンス』の連載は終了しましたが、帆船に興味を感じた方に、さらに帆船にまつわる本をご紹介します。
今回は「フィクション」編です。
まずは児童文学の名作から
- 『ヤマネコ号の冒険』 アーサー・ランサム著、岩田欣三訳、岩波書店
いわずとしれた「つばめ号とアマゾン号」シリーズの一冊。フリント船長と子供たちが乗り組んだ二本マストのスクーナー・ヤマネコ号での、宝探しをめぐる冒険航海。読み進むうちに、帆船の操法をマスターしてしまったような気になる本。
- 『ニワトリ号一番のり』 ジョン・メイスフィールド著、木島平治訳、福音館
帆船全盛時代、中国からの新茶を積んだクリッパー船(高速帆船)での英国までのレースを舞台にした物語。汽船と衝突しボートで脱出したブラック・ゴーントレット号の乗組員たちは、無人で漂流していた謎に包まれているニワトリ号に乗り移り……
ここからは海の男たちの骨太の物語を
- 『海の狼』 ジャック・ロンドン著、関弘訳、トパーズプレス
「野生の呼び声」などアラスカもので知られるジャック・ロンドンは、十代でアザラシ猟の漁船に乗り組んだ体験を持ち、それを元に想像力豊かに海の狼ラーセン船長とゴースト(幽霊)号の物語を描き出す。海洋文学の傑作。
- 『海の勇者たち』 ニコラス・モンサラット著、関口篤他訳、徳間文庫
スペイン無敵艦隊を破った英雄ドレークの艦隊で操舵手をつとめ、時代を超えて生きるマシュー・ローの目から見たオムニバス形式の物語。十六世紀から二十世紀後半までの十五話(全三巻)。
- 『船になりたくなかった船』 ファーレイ・モウワット著、磯村愛子訳、文春文庫
カナダ東岸の三十一フィートの小型スクーナー「ハッピー・アドベンチャー」号をめぐる奇想天外なユーモア小説。とはいえ、海や船をめぐる描写は正確で秀逸。
- 『海神丸』 野上彌生子著、岩波文庫
二本マストの木造帆船・海神丸は正月前の航海で暴風雨に遭遇し、大西風のため冬の太平洋に押し流されて漂流するはめに。四人の乗組員の極限状況における人間ドラマ。実際にあった海難事故に取材したとされる古典的作品。
- 『眞昼の海への旅』 辻邦生著、集英社
人種も国籍も異なる十六人の男女が乗り組んだ全長二十六メートル、二本マストの帆船による世界周航の航海と、その過程で連続して起きた不吉な出来事と殺人事件。生存者をさばく法廷での証言による陳述で物語が描かれていく。
- 『海狼伝』『海王伝』 白石一郎著、文藝春秋社
戦国時代を背景に、瀬戸内海賊の血をひく呼子笛太郎の壮大な海をめぐる物語。瀬戸内海や九州から朝鮮半島、中国大陸、さらにはタイ・シャム湾までを舞台に展開される海賊の一代記。
ここからは、海洋冒険小説では定番の大英帝国海軍の将校ものを、いくつかご紹介
- 『海の男――ホーンブロワー・シリーズ』セシル・スコット・フォレスター著、菊池光、高橋泰邦訳、ハヤカワ文庫
ナポレオンと戦争中の英海軍・艦長ホーンブロワーを主人公とする全十巻の物語。海洋冒険小説の代名詞ともなっている。特に第5巻『パナマの死闘』は木造帆船同志の壮絶な戦いで、映画化もされている。
- 『海の勇士――ボライソー・シリーズ』アレグザンダー・ケント著、高橋泰邦訳、早川書房
ホーンブロワーと並び称される海洋冒険小説のシリーズ。こちらもやはり英国海軍の軍人ボライソーが主人公の長編シリーズ。原作では時代が前後しているが、邦訳では主人公の成長に合わせて刊行されている。
- 『ラミジ艦長物語』ダドリ・ポープ著、田中欣哉他訳、至誠堂
主人公のニコラス・ラミジは英国貴族で、ネルソン提督時代の帆走フリゲート艦シベラ号の若手将校。父親はかつての提督で汚名を着せられて失脚しており、自国の海軍内に敵がいるというのが他とひと味違うロングランシリーズ。
- 『海軍将校リチャード・デランシー物語り』 C・ノースコート・パーキンソン著、出光宏訳、至誠堂
貴族など門閥が幅をきかせる英海軍で、そうした後ろ盾もないまま、苦悩しつつも誠実に道を切り開き、最後にはナイトに叙せられるまでのリチャード・デランシーの物語。全六巻のシリーズ。
- 『闘う帆船ソフィー』 パトリック・オブライエン著、高橋泰邦訳、パシフィカ
英仏が海の覇権を争っていたナポレオン時代の大英帝国海軍士官、ジャック・オーブリーが主人公。軍医との友情に加えて、帆船の構造や船内の生活が詳細に描かれているのが他のシリーズとは違うところ。