ジョン・マクレガー著
現代のカヤックの原型となった(帆走も可能な)ロブ・ロイ・カヌーの提唱者で、自身も実際にヨーロッパや中東の河川を航海し伝説の人となったジョン・マクレガーの航海記の本邦初訳(連載の第87回)
宝島の作者スティーヴンソンやナポレオン三世に影響を与えただけでなく、欧米においてカヌー/カヤックによる旅の可能性を広く知らしめることになったジョン・マクレガーのカヌーによる欧州大陸の川旅もいよいよ大詰めです。
今回から最終章となります。
フランスの大平原の川や運河を漕ぎつないでセーヌ川へ、そしてパリへ、さらに故国イギリスへ──、
第十五章
月が出た。非常にはっきり見える。とはいえウサギならぬ「月の男」は見えない。月光に照らされて結婚披露宴を行っている人々がいる。若い連中は庭に移動し、爆竹やクラッカーを鳴らしたりしてさわいでいる。ぼくが部屋の窓から信号灯で近くを照らしてやると喝采が起きた! その翌日、披露宴の出席者全員が朝食を食べるために集まっていて、上機嫌の花嫁の父の大盤振る舞いでマディラ・ワインやシャンパンをあびるように飲んでいた。ドイツ人たちはまだモーには来ていなかった。