米窪太刀雄(よねくぼ たちお)著
夏目漱石も激賞した商船学校の練習帆船・大成丸の世界周航記。
若々しさにあふれた商船学校生による異色の帆船航海記が現代の言葉で復活(連載の第75)
テーブルマウンテン
一、厳粛なる啓示者
西暦一六一五年にサー・トーマス・ハーバードは「なに、テーブル・マウンテンに登るくらいはなんでもない。ほら見ろ。船乗りは普段から保養がてら登っておるわい」と喝破(かっぱ)して、一五〇三年にはじめてこの山に第一登山者の誇りを残したポルトガル人、アントニオ・ダ・サルダンハの高々とうごめかす得意の鼻をへし折った。