スティーヴン・クレイン

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オープン・ボート

オープン・ボート 11

スティーヴン・クレインV「パイだと」と、機関士と記者が怒ったようにいった。「そんな話するなよ、馬鹿野郎!」「だってよ」と、料理長がいった。「ハムサンドのことを考えていたんだ。そしたら――」海で甲板のない小舟に乗っていると、夜が長く感じられる...
オープン・ボート

オープン・ボート 10

スティーヴン・クレイン低い陸地の上空がかすかに黄色みを帯びてきた。夕闇が少しずつ濃くなってくる。それにつれて風が冷たくなり、男たちは体をふるわせた。「くそったれが!」と、一人がいらだっていった。「いつまで、こんな風にしてなきゃなんないんだ。...
オープン・ボート

オープン・ボート 9

スティーヴン・クレイン砂浜は遠く離れていて、海面より低く見えた。小さな黒い人影を見分けるには、目をこらして探さなければならなかった。船長が棒きれが浮いているのを見つけたので、そこまでボートを漕ぎよせた。ボートにはなぜかバスタオルが一枚あった...
オープン・ボート

オープン・ボート 8

スティーヴン・クレイン著そのとき迫ってきた波は、さらにおそろしかった。こういう波はいつだって、小さなボートに襲いかかって泡立つ海に引きづりこもうとする。波が迫ってくるときは、その前から長いうなりのような音がした。海になれていなければ、ボート...
オープン・ボート

オープン・ボート 7

IV「料理長君」と、船長がいった。「君のいう避難所には、人のいる気配がないようだが」「そうですね」とコックが答えた。「妙ですね、俺たちのことが見えてないなんて!」 ボートに乗った男たちの眼前には、低い海岸が広がっていた。上が植物で黒っぽくな...
オープン・ボート

オープン・ボート 6

スティーヴン・クレインこうした理由から、機関士も記者も、このときばかりは漕ぎたくなかった。記者は、正直にいうと、まともな人間で、こういうときにボートを漕ぐのが楽しいと思うようなやつがいるわけないと思った。気晴らしのレジャーではないのだ。ひど...
オープン・ボート

オープン・ボート 2

この救命ボートに乗るのは、ロデオの暴れ馬に乗っているようなものだった。馬とボートを比べても、大きさにたいして変わりはない。ボートは馬のように跳ねたり船尾を下にして立ち上がったり、海面に突っこんだりした。波が来るたびにボートは高く持ち上げられ...
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