オープン・ボート スティーヴン・クレインの手記 4 航海士に手を貸す書き忘れていたが、ぼくらはコモドア号と小舟をつないでいる細いロープを伸ばしていたので、ボートはずっと風下に押し流されていた。当然のことながら、なぜ連中がまだ船に残っているのか、ぼくらには不可解だった。すべての救命ボートが船を... 2018.10.20 オープン・ボート読み物
オープン・ボート スティーヴン・クレインの手記 3 救命ボートを下ろす機関室の熱と重労働に耐えきれず、ぼくはまた甲板に戻らざるをえなかった。船の前部に向かっていると、ボートを下ろすという話が聞こえてきた。厨房のそばで、航海士が一人の男と話をしていた。「なんで救難信号を打ち上げないんだ?」と、... 2018.10.13 オープン・ボート読み物
オープン・ボート スティーヴン・クレインの手記 2 眠れない海に夜の闇がおとずれた。コモドア号の船尾には夜光虫による幅の広い青白い光の航跡がのびている。コモドア号のずんぐりした船首が黒く大きな波に突っこむたびに、船の一方の側で海水が渦をまき点滅しながら滝のように流れ落ちていく。聞こえるのは、... 2018.10.06 オープン・ボート読み物
オープン・ボート スティーヴン・クレインの手記 1 この手記は、スティーヴン・クレインが自分の乗った船が沈没したときの経験を記事にまとめたノンフィクションで、後にこれを下敷きにした短編『オープン・ボート』を執筆しました。一連の手記とあわせて出版され、クレインの出世作となりました。『オープン・... 2018.09.29 オープン・ボート読み物
オープン・ボート オープン・ボート 17 スティーヴン・クレイン著だが、とうとう、それ以上はどうしても進めなくなった。その場所の潮流がどんな風に流れているのか泳ぐのをやめて調べたりはしなかったが、どうしても前に進まない。海岸は舞台の景色のように目の前にあった。細部にいたるまではっき... 2018.09.22 オープン・ボート読み物
オープン・ボート オープン・ボート 16 スティーヴン・クレイン著海では、押し寄せてきた大波の頂点がいきなり轟音をあげて崩れ落ち、長く続く白い砕け波がボートに襲いかかった。「ようそろ。そのままいけ」と船長がいった。岸の方を眺めていた男たちは無言のまま視線を押し寄せてくる波の方に移し... 2018.09.15 オープン・ボート読み物
オープン・ボート オープン・ボート 15 スティーヴン・クレイン著VII記者がまた目を開けたときには、夜が明けかけており、海も空も灰色がかっていた。それから海面が深紅と金色に彩られた。とうとう夜が明けたのだ。空は真っ青で、波の一つ一つに朝日が反射し輝いていた。遠くの砂浜には、黒っぽ... 2018.09.08 オープン・ボート読み物
オープン・ボート オープン・ボート 14 スティーヴン・クレイン著 記者には今はもう兵士がはっきりと見えてきた。足をのばして砂の上に横たわり、じっと動かない。命が消えていくのを阻止しようとでもするかのように、青白い左腕を胸に載せているが、指の間から血が流れ出ていた。はるか遠くアルジ... 2018.09.01 オープン・ボート読み物
オープン・ボート オープン・ボート 13 スティーヴン・クレイン著VI「もしも俺がおぼれるとして――おぼれて死ぬかもしれないが――おぼれ死ぬとして、海を支配している七人の神様の名にかけて、俺はなぜこんな遠くまでやってきて、砂浜や木々をながめさせられているのだろうか?」この暗く憂鬱な... 2018.08.25 オープン・ボート読み物
オープン・ボート オープン・ボート 12 スティーヴン・クレイン記者は漕ぎながら、足元で眠っている男二人を見おろした。料理長の腕は機関士の肩にまわされていた。服はやぶけ、疲れ切った顔をしていて、海に迷いこんだ二人の赤ん坊といった風だった。昔話にあった森に迷いこみ抱きあって死んでいた... 2018.08.18 オープン・ボート読み物