オープン・ボート

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オープン・ボート

オープン・ボート 17

スティーヴン・クレイン著だが、とうとう、それ以上はどうしても進めなくなった。その場所の潮流がどんな風に流れているのか泳ぐのをやめて調べたりはしなかったが、どうしても前に進まない。海岸は舞台の景色のように目の前にあった。細部にいたるまではっき...
オープン・ボート

オープン・ボート 16

スティーヴン・クレイン著海では、押し寄せてきた大波の頂点がいきなり轟音をあげて崩れ落ち、長く続く白い砕け波がボートに襲いかかった。「ようそろ。そのままいけ」と船長がいった。岸の方を眺めていた男たちは無言のまま視線を押し寄せてくる波の方に移し...
オープン・ボート

オープン・ボート 15

スティーヴン・クレイン著VII記者がまた目を開けたときには、夜が明けかけており、海も空も灰色がかっていた。それから海面が深紅と金色に彩られた。とうとう夜が明けたのだ。空は真っ青で、波の一つ一つに朝日が反射し輝いていた。遠くの砂浜には、黒っぽ...
オープン・ボート

オープン・ボート 11

スティーヴン・クレインV「パイだと」と、機関士と記者が怒ったようにいった。「そんな話するなよ、馬鹿野郎!」「だってよ」と、料理長がいった。「ハムサンドのことを考えていたんだ。そしたら――」海で甲板のない小舟に乗っていると、夜が長く感じられる...
オープン・ボート

オープン・ボート 10

スティーヴン・クレイン低い陸地の上空がかすかに黄色みを帯びてきた。夕闇が少しずつ濃くなってくる。それにつれて風が冷たくなり、男たちは体をふるわせた。「くそったれが!」と、一人がいらだっていった。「いつまで、こんな風にしてなきゃなんないんだ。...
オープン・ボート

オープン・ボート 9

スティーヴン・クレイン砂浜は遠く離れていて、海面より低く見えた。小さな黒い人影を見分けるには、目をこらして探さなければならなかった。船長が棒きれが浮いているのを見つけたので、そこまでボートを漕ぎよせた。ボートにはなぜかバスタオルが一枚あった...
オープン・ボート

オープン・ボート 8

スティーヴン・クレイン著そのとき迫ってきた波は、さらにおそろしかった。こういう波はいつだって、小さなボートに襲いかかって泡立つ海に引きづりこもうとする。波が迫ってくるときは、その前から長いうなりのような音がした。海になれていなければ、ボート...
オープン・ボート

オープン・ボート 7

IV「料理長君」と、船長がいった。「君のいう避難所には、人のいる気配がないようだが」「そうですね」とコックが答えた。「妙ですね、俺たちのことが見えてないなんて!」 ボートに乗った男たちの眼前には、低い海岸が広がっていた。上が植物で黒っぽくな...
オープン・ボート

オープン・ボート 6

スティーヴン・クレインこうした理由から、機関士も記者も、このときばかりは漕ぎたくなかった。記者は、正直にいうと、まともな人間で、こういうときにボートを漕ぐのが楽しいと思うようなやつがいるわけないと思った。気晴らしのレジャーではないのだ。ひど...
オープン・ボート

オープン・ボート 5

III海の上で同じ船に乗りあわせた者たちに生じる微妙な連帯感を言葉で表すのはむずかしい。誰も同志だとはいわなかったし、そういうことを口にする者もいなかったが、一緒にボートに乗るはめになってみると、そういう感情というものが実際に存在し、互いに...
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