現代語訳『海のロマンス』121:練習帆船・大成丸の世界周航記

米窪太刀雄(よねくぼ たちお)著

夏目漱石も激賞した商船学校の練習帆船・大成丸の世界周航記。
若々しさにあふれた商船学校生による異色の帆船航海記が現代の言葉で復活(連載の第121回)

白川大路(アベニュー・ブランコ)の美人

南半球の心地よい秋の涼感を肌に味わいつつ、カフェの「店前のテーブル(テラス)」によって、見目美しく静かにリオ・ブランコの美しき人道(フットパス)をよぎる美しき女の群れを見るよりも美しきものはあるまいと思う。

静かに眠れるときの美しさを忍ばせるに足る。やさしい、情けある、長いまつげの奥に、ただ黒曜石とばかり輝ける黒い瞳が憂(うれ)いを含んで静かに動くさまは、まだ見はてぬ美しき夢に憧がれるようである。このラテン型の美しく大きな眼をさらに大きく、さらに愛くるしく見せんがために、黒いアイラインを入れて眼をくっきり見せた女が、わき目も振らずクジャクのように傲然(ごうぜん)と過ぎる。 続きを読む