読み物

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オープン・ボート

オープン・ボート 6

スティーヴン・クレインこうした理由から、機関士も記者も、このときばかりは漕ぎたくなかった。記者は、正直にいうと、まともな人間で、こういうときにボートを漕ぐのが楽しいと思うようなやつがいるわけないと思った。気晴らしのレジャーではないのだ。ひど...
オープン・ボート

オープン・ボート 5

III海の上で同じ船に乗りあわせた者たちに生じる微妙な連帯感を言葉で表すのはむずかしい。誰も同志だとはいわなかったし、そういうことを口にする者もいなかったが、一緒にボートに乗るはめになってみると、そういう感情というものが実際に存在し、互いに...
オープン・ボート

オープン・ボート 4

一方、機関手と記者はボートを漕ぎ続けていた。漕ぎに漕いだ。彼らは同じシートに腰かけ、それぞれ一本のオールで漕いだ。やがて機関手が両手で二本のオールを左右に持って漕ぐようになった。それから記者が交代し、同じように両手で左右のオールを漕いだ。彼...
オープン・ボート

オープン・ボート 3

波の頂点でボートが跳ねると、風が無帽の男たちの髪をかき乱した。ボートがまた船尾から着水すると、水しぶきが乱れた髪をなでつけていった。盛り上がった波は丘のようで、その頂点にきたとき、一瞬だが、風が吹き乱れている広大な光かがやく大海原が見えた。...
オープン・ボート

オープン・ボート 2

この救命ボートに乗るのは、ロデオの暴れ馬に乗っているようなものだった。馬とボートを比べても、大きさにたいして変わりはない。ボートは馬のように跳ねたり船尾を下にして立ち上がったり、海面に突っこんだりした。波が来るたびにボートは高く持ち上げられ...
オープン・ボート

オープン・ボート 1

今回からスティーヴン・クレインの『オープン・ボート』の新訳をお届けします。 スティーヴン・クレイン(1871年~1900年)は米国の自然主義文学の先駆とされる作家で、『赤い武功章』『街の女マギー』などの作品があります。 二十八歳で早世したた...
スティーヴンソンの欧州カヌー紀行

スティーヴンソンの欧州カヌー紀行 (50)

元の社会へ(adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({});それからの二日間の航海についてはほとんど覚えていないし、ノートにも何も書いてない。快適な風景の中を川は安定して流れていた。青い服を...
スティーヴンソンの欧州カヌー紀行

スティーヴンソンの欧州カヌー紀行 (49)

彼がワイン片手に語る体験談は傾聴に値した。話がとてもうまくて、自分の失敗談も笑いにまじえて披露したし、大海原で危険に遭遇し、押し寄せる波の音をきいたときのように、いきなり深刻な顔になったりした。二人分の鉄道料金と宿泊費で三フラン支払わなけれ...
スティーヴンソンの欧州カヌー紀行

スティーヴンソンの欧州カヌー紀行 (48)

以前、セーヌ・エ・マルヌ県の宿に滞在していたとき、旅芸人の一行がその宿にやってきたことがあった。父親と母親、それに夫婦の娘二人と色の黒い若者で、娘の方はどちらも歌をうたったり芝居をしたりしたものの、これで舞台に立つとは厚かましいと思えるレベ...
スティーヴンソンの欧州カヌー紀行

スティーヴンソンの欧州カヌー紀行 (47)

ぼくはこの騒動にひどく驚かされた。というのも、こういうフランスの旅興行の連中とはよく出会っていて、いつも楽しかったからだ。旅芸人の存在は、人生についてしっかり考えようとする者にとっては、それが会社とか商業主義に対する反抗でしかなかったとして...
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