読み物

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オープン・ボート

オープン・ボート 16

スティーヴン・クレイン著海では、押し寄せてきた大波の頂点がいきなり轟音をあげて崩れ落ち、長く続く白い砕け波がボートに襲いかかった。「ようそろ。そのままいけ」と船長がいった。岸の方を眺めていた男たちは無言のまま視線を押し寄せてくる波の方に移し...
オープン・ボート

オープン・ボート 15

スティーヴン・クレイン著VII記者がまた目を開けたときには、夜が明けかけており、海も空も灰色がかっていた。それから海面が深紅と金色に彩られた。とうとう夜が明けたのだ。空は真っ青で、波の一つ一つに朝日が反射し輝いていた。遠くの砂浜には、黒っぽ...
オープン・ボート

オープン・ボート 14

スティーヴン・クレイン著 記者には今はもう兵士がはっきりと見えてきた。足をのばして砂の上に横たわり、じっと動かない。命が消えていくのを阻止しようとでもするかのように、青白い左腕を胸に載せているが、指の間から血が流れ出ていた。はるか遠くアルジ...
オープン・ボート

オープン・ボート 13

スティーヴン・クレイン著VI「もしも俺がおぼれるとして――おぼれて死ぬかもしれないが――おぼれ死ぬとして、海を支配している七人の神様の名にかけて、俺はなぜこんな遠くまでやってきて、砂浜や木々をながめさせられているのだろうか?」この暗く憂鬱な...
オープン・ボート

オープン・ボート 12

スティーヴン・クレイン記者は漕ぎながら、足元で眠っている男二人を見おろした。料理長の腕は機関士の肩にまわされていた。服はやぶけ、疲れ切った顔をしていて、海に迷いこんだ二人の赤ん坊といった風だった。昔話にあった森に迷いこみ抱きあって死んでいた...
オープン・ボート

オープン・ボート 11

スティーヴン・クレインV「パイだと」と、機関士と記者が怒ったようにいった。「そんな話するなよ、馬鹿野郎!」「だってよ」と、料理長がいった。「ハムサンドのことを考えていたんだ。そしたら――」海で甲板のない小舟に乗っていると、夜が長く感じられる...
オープン・ボート

オープン・ボート 10

スティーヴン・クレイン低い陸地の上空がかすかに黄色みを帯びてきた。夕闇が少しずつ濃くなってくる。それにつれて風が冷たくなり、男たちは体をふるわせた。「くそったれが!」と、一人がいらだっていった。「いつまで、こんな風にしてなきゃなんないんだ。...
オープン・ボート

オープン・ボート 9

スティーヴン・クレイン砂浜は遠く離れていて、海面より低く見えた。小さな黒い人影を見分けるには、目をこらして探さなければならなかった。船長が棒きれが浮いているのを見つけたので、そこまでボートを漕ぎよせた。ボートにはなぜかバスタオルが一枚あった...
オープン・ボート

オープン・ボート 8

スティーヴン・クレイン著そのとき迫ってきた波は、さらにおそろしかった。こういう波はいつだって、小さなボートに襲いかかって泡立つ海に引きづりこもうとする。波が迫ってくるときは、その前から長いうなりのような音がした。海になれていなければ、ボート...
オープン・ボート

オープン・ボート 7

IV「料理長君」と、船長がいった。「君のいう避難所には、人のいる気配がないようだが」「そうですね」とコックが答えた。「妙ですね、俺たちのことが見えてないなんて!」 ボートに乗った男たちの眼前には、低い海岸が広がっていた。上が植物で黒っぽくな...
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