ヨーロッパをカヌーで旅する 59:マクレガーの伝説の航海記

ジョン・マクレガー著

現代のカヤックの原型となった(帆走も可能な)ロブ・ロイ・カヌーの提唱者で、自身も実際にヨーロッパや中東の河川を航海し伝説の人となったジョン・マクレガーの航海記の本邦初訳(連載の第59回)

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カヌーの運搬では自分たちを雇えと言外に示唆しているのかを確かめるため、ぼくは二人に、万一に備えてそっちの船でついてきてもらえませんかと聞いてみた。彼らは相談していたが、この提案には乗ってこなかった。それで、問題の激流の瀬を通過するためのベストなコース選択について聞いてみた。彼らは砂の上によくわからない絵を描き、かなりこみ入った指示を授けてくれた。が、それを実行するのは無理だった。で、ぼくは静かに頭を下げ、砂に描かれた絵を足でもみ消し、何も聞かなかったことにして行き当たりばったりでいくことにした。まあ「知らぬが仏」というが、実際に行ってみないとわからないとも思ったのだ。進むべき道は自分で見つけるという高揚した意気ごみと、それを自分で見つけたときの満足感は、そのためにした苦労には十分報いてくれる。それだけの価値がある。山岳地帯を旅しているときもそうだった。単に足の筋肉を動かして景色を見るためだけに行くのであれば、ガイドを三人ほども雇い、互いに身体をロープで結びあってガイドの後を黙ってついていけば成功するだろう。だが、頭を使い、気を配り、判断するのはガイドの役割で、案内される側はただその尻を見ながらついていくだけだ。

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